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宵烟の交流返しをしました

9月8日
読了時間: 4分

へのお返しです。しおう きよみ様のところのアキラさんをお借りしています。




「ヨキさんこんにちはー」

事務所の玄関から能天気なご挨拶が響く。ヨキは書類の手を止め緩慢に振り向いた。

「また遊びに来たのか」

「えへへー」

「今日こそ大人しくしてろよ」

「前も大人しかったよ」

「全くそんなことはなかったが?」

話しながら、アキラは事務所のソファにちょんと座る。

ごきげんなアキラを見やり、ヨキは引き出しから缶を取り出しアキラの前に置いた。

「え、何何?」

「クッキー缶。こないだのリゾットの礼だ。甘いモン好きだろ。」

「えー、いいのに」

ヨキが置いたクッキー缶は、小さいながらも細かい装飾がされていて、高そうに見える。

「…高かったんじゃないの」

「さあな」

ヨキは薄く笑って机に向かい直す。

ヨキさんって笑うんだ、とアキラは思いながらもう一度クッキー缶に目を落とす。

月と星と花の模様が描かれた、ステンドグラス風のデザイン。周囲はぐるりと時計のように異国の数字で取り囲まれ、缶に施された立体的な加工でキラキラして見える。

「…きれい。ヨキさん、ありがとう」

「ああ。…今日は16時から客が来るから、満足したらそれ持ってとっとと帰れよ」

「また追っ払おうとするぅ…」

ヨキはアキラを見もせずにカリカリとペンを走らせている。

しばらく口を尖らせていたアキラだったが、やがて何か思いついたようにニンマリとして立ち上がった。

時計は15時を指している。

「ね、ヨキさん」

アキラは書き物をするヨキの背中にくっつく。

「なんだ」

「一緒にこのクッキーでお茶にしよ!ちょうど3時だし、お客さん来るまでまだ時間あるし」

「何故そうなる。それはお前にやったんだが」

「いいじゃん、あたしが貰ったんだからあたしがどうしようが勝手でしょ」

「それはそうだが」

「決まりね!お茶淹れたげる!」

そう言ってアキラはパタパタとキッチンへ向かい、勝手知ったるとばかりにお茶を淹れ始める。

ヨキは頭を掻きながらお茶を淹れるアキラの後ろ姿を見やった。


「開けるよ〜!……わあ!」

クッキー缶の蓋を開けたアキラから歓声が上がる。

中心に缶の花を模したアイシングクッキーが置かれ、あとは月や星を模した何種類かのクッキーが入っている。

「えへへ、どれから食べよっかな〜!アイシングクッキーはかわいいから最後にしよ!んふふ」

騒ぎながら、アキラはクッキーを1枚取り口に運ぶ。

「ん〜!おいし!」

つられるようにヨキもおそらくプレーンであろうクッキーを1枚手に取り口にする。

甘さとバターの香りが口の中で解けていく。

「えへへー、おいしいね、ヨキさん」

「…ああ」

カリカリとクッキーを齧るアキラを見ながら、ヨキはクッキーを1枚だけ食べてあとはお茶を啜っている。

「もう食べないの?…甘いもの苦手だった?」

「いや。俺が食うと減るだろ。せっかくお前にやったのに」

「えー、気にしなくていいのに。ほら、このお月様とかキャラメルでおいしかったよ」

「…そうか」

言われるがままに月のクッキーを取り口にする。

バターの風味とキャラメルの香ばしさが口に広がる。

「うまいな」

「でしょ!」

嬉しそうに笑って、アキラはまたクッキーを1枚とる。

1枚1枚ちまちま食べて味わうアキラはまるで子リスか何かのようだと、ヨキは思った。

アキラが何が言ってはヨキが短く相槌をうち、やがて4、5枚ほど食べたアキラが「もうそろそろおしまいにしよっかな」と言った。

「もういいのか」

「うん。お腹いっぱいになっちゃうもん。晩ご飯入らなくなっちゃう」

「そうか」

「ヨキさんももういい?」

「ああ」

そう聞いてアキラは缶に蓋をして、ご機嫌に缶を眺める。

「ね、このお花、なんだろうね」

「さあ…チューリップとかじゃないのか。…赤の」

「でも花びらの先青いよ?なんかくるくるしてるし」

「そういうデザインだろ」

「そうかなあ」

そんな他愛のない会話を交わしていると、事務所の扉が開き、杖をついた老人が入って来た。

「すみません、少し早く着いてしまって…おや、ティータイム中でしたかな」

「いや、構わない。…アキラ」

「わかってるよお」

アキラはお茶を飲み干してカバンに缶をしまい、肩からかける。

ヨキは事務所の玄関までアキラを送る。

「お邪魔しました。クッキーありがとう、ヨキさん」

「ああ。…今日は走るなよ、クッキー粉になるぞ」

「わかってるよ、子供じゃないんだよ。じゃあね、お仕事がんばって」

そう言って帰っていくアキラの背中を見送り、老人に向き直る。

「すまない、待たせた」

「いえいえ、私の方こそティータイムを邪魔しちゃってすまないねえ」

「いや、いい。ところで…」

話しながら、ヨキは事務所の扉を閉めた。

静かになった裏通りを、月が照らしている。


 
 
 

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